【本】株式投資の未来/ジェレミー・シーゲル(日経BP社)

インデックスを上回るリターンを得るために

株価上昇と共に、SNS上では米国株投資ブロガーの方々のタイムラインが賑やかですが、そんな米国株投資家たちのバイブル的な書籍がジェレミー・シーゲル教授の「株式投資の未来」です。

発行時期が少し古いためにこれまで読まずにいましたが、実際に読んでみると目からうろこが落ちるようなタメになる内容の連続に、新たな気付きもあってとても新鮮でした。

全体的な構成は、大きく5部に分かれておりますが、最も気付きが多いのはなんといっても「第一部 成長の罠」、そしてそれに続く「第二部 過大評価される成長株」と「第三部 株主価値の源泉」でしょうか。

少しでも株をかじったことのある人ならば、IBMが叩き出してきた数字を見れば、すぐにIBMが抜群に優秀な銘柄であるとすぐに気付くはずです。

そんなIBMと、決して悪くはないがIBMにはあらゆる数字で見劣りするエクソンモービル(XOM)を比較して「あなたならどちらを買いますか?」という問いから話が始まります。

 

まんまと「成長の罠」に引っ掛かる

(株式投資の未来/ジェレミー・シーゲル)

スタンダードオイル・オブ・ニュージャージー(現エクソンモービル)は、石油というコモディティーを扱い、世界各地の紛争地域や発展途上国で危険と隣り合わせで活動し、常に環境問題などでは矢面に晒されるなど数多くのリスクを抱えています。

どちらが高いリターンを上げられるかと問われれば、これらのエクソンの背景にあるリスクを抜きにしても、数字を見るだけで誰もがIBMを選ぶのではないでしょうか。

しかし、シーゲル教授はその判断こそ「成長の罠」とし、実際はIBMよりもエクソンに投資をしていた方がリターンは大きくなったことを過去の膨大なデータを解析し、立証し読者を驚かせます。

 

そのような結果になる原因はバリュエーション(株価評価)。株価を決定付ける要素として「業績」や「配当」などがありますが、これらは決算ごとに代わることはあっても簡単に変動するモノではありません。しかし、投資家からの「期待値」については簡単に変動し、株価を激しく上下させます。

IBMがいくら高い成長力を誇っていても、同時に投資家からの期待も高ければ株価も割高で、その期待以上の業績を上げ続けなければ株主に高いリターンをもたらすことはできません。

一方のエクソンは、業績面の数字はIBMに数段劣りますが、それ以上にバリュエーションが低く、株価は常に低く抑えられていました。そして、そのおかげで毎年高い配当利回りで株主に還元し続け、この配当を再投資することでIBMを上回るリターンを上げてきたのです。

 

また、本書の中で個人的に気付かされ、考え方が大きく変わったものとしては、配当に関する考え方があります。

バフェット崇拝者に忌み嫌われる配当(配当を支払うと税金が差し引かれて結果的に資産が目減りするから)ですが、シーゲル教授は、配当は利益を上げていることの証明であり、最もごまかし難い企業の成績であるとし、高い配当利回りと再投資こそが資産の増大を生むとしています。

ここでは割愛しますが、その他にも、設備投資に多額のコストが掛かるセクターは相対的にリターンが低いこと、成長株(グロース株)の罠についてなど、膨大なデータに裏付けされた確証の数々に読みながら発見の連続でした。

個人的には、補正こそすれ、これまでの投資スタイルをガラリと変えることはありませんし、全ての投資家がこの通りにすれば幸せになれるかと言えばそうではないと思いますが、経験値を問わず読む人全てに何かしらの学びを与えてくれます。

投資を実践する者であれば、投資の基礎知識として誰もが一度は通読すべき情報満載の一冊です。

 

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