すかいらーく(3197)第7期定時株主総会レポート
ベインキャピタルが抜けた後の今後の展望
2018年3月29日、すかいらーく(3197)の株主総会に初めて出席しましたので、備忘録として記録しておきます。なお、細かいニュアンスについては記録者の都合のいい解釈が多分に入っている可能性もありますので、参考程度にご覧いただければ幸いです。
- 企 業 名 株式会社すかいらーく(東証一部上場)
- 開催日時 2018年3月29日(木)10:00~
- 開催場所 京王プラザホテル 本館5階 コンコードボールルーム
- 特殊株主 無
- 議案内容
第1号議案 定款一部変更の件
第2号議案 取締役8名選任の件
第3号議案 監査役2名選任の件 - 株主人数 1,000名以上
- 手土産等 お茶(ペットボトル1本)
総会の内容
株主総会出席者への手土産は無いにも関わらず、最前列からびっしりと席が埋まる盛況ぶりで、投資家の関心の高さが伺えました。場内で誘導する係員は、皆各レストランのユニフォームを着て案内をしていたのが印象的でした。
冒頭、社長から11年にわたるファンド株主サポートが終了した旨の報告があり、また報告事項の説明は、まるでIR説明会かのように、業績内容やその結果に至った経緯について、大変丁寧で詳細な説明が行われ、質疑応答に入るまでの約1時間が会社側の報告・説明に当てられました。
以下のその内容を記載しますが、個人的にはこの報告・説明を聞くだけでも、株主総会に参加する価値がある非常に濃い内容だったと感じています。以下に約1時間にわたり社長自ら説明した報告内容の趣旨をまとめておきます。
報告事項の内容
1.すかいらーくの現状について
- 2008年にすかいらーくがMBOして野村プリンシパル、次いで2011年にベインキャピタルの支援を受けていたが、2017年にベインキャピタルが株式を売却し、11年間の株主サポート体制が終了した。
- 現在約3,000店舗、年間4億人の来店客数を誇り、業界トップである。すかいらーくグループの強みは、20以上の多様な業態とそれを支えるプラットフォームであり、仕入れから加工、検査、提供までを一貫して自社内で行い、スケールメリットを最大限に生かしている。外食産業で重要なのは食の安全であるが、食品検査は年間13万検体を越え、これも外食業界トップ。
- 既存店においては、リモデル(改装)と業態転換を行い、地域の特性や移りゆく年齢構成に合った店舗に改めることで利益性を高めている。一方で宅配・テイクアウトについてはグループ全体で強化。また、海外では台湾54店舗をはじめ、東南アジアやアメリカなどへの出店を模索中。
2.業績結果とそれに至った経緯
- 業績は前期比で、売上高+49億円、営業利益▲31億円(▲10.1%)、当期純利益▲12億円(▲7.1%)、ROE14.1%、営業利回り7.8%、負債▲104億円。
- 増収減益になった理由には以下の3点。①第4Qの利益減、②人件費の単価上昇、③株主優待拡充による引当コスト増。
- ファンドが抜け、この先どう成長を持続的なものにしていくのか検討を重ねた結果、1⃣割引クーポン数の削減、 2⃣メニュー改定頻度の見直し、 3⃣食器数の削減を実施し、オペレーション作業を減らした。特にクーポンは330種から30種類余りへと1/10まで減らし、重複をなくした。
- これらの施策を第4Qで実施したため、一時的に利益は減ったが、今後も顧客の指示を得るためにどうすべきかを考え、実践した期間。全てはこれからの3年間のため。
3.すかいらーくの強みと今後の取り組み
- すかいらーくの強みはテーブルサービス人材集団であること。ファストフードには手を出していない(差別化)。
- そして、垂直システムで食材コスト等の上昇局面で強みを発揮する。
- また、新業態も8業態、260店出店しており、成功確率も高い。
- 宅配も年々増やしている。ガストだけでなく、現在7地区でグループ店舗の配達を効率よく行うペアリングを試験運用中。
- 4月からグランドメニューが一新されるが、今回新たにピザラインを完成させた。全国どこでも美味しいピザが食べられるようになる。
- 2017年は新規に97店舗を出店させたが、2018年も100店舗出店予定。
- クーポンの乱発や頻繁なメニュー改定を無くし、従業員の疲弊を回避。
- 先々の不安要素(1⃣2019年10月の消費増税では軽減税率対象外であること、2⃣2020年のオリンピック後の不透明感、3⃣2022年の団塊の世代の後期高齢者入りなど)に備えるための将来を見据えた取り組みであり、株主には理解を賜りたい。
- 100億円の店舗投資で効率化を図り、スタッフ用に動画マニュアルなども順次作成中。高い営業利益率を再投資する。
4.今後の業績見通しと補足説明
- 2018年は前期比で売上高+4%、営業利益+2.1%、当期純利益+1.5%、配当性向40%、年間38円を予定している。
- のれん1,461億円については、ファンド買収の時のものだが、各店舗ともしっかり利益を上げているのでキャッシュフローを元にした減損テストも問題なく、大規模な減損はないと考える。
- また、借入金1,292億円は現在の英金利の環境を最大限に活用するため順次借り替えを行う。自己資本比率は39.3%。
10時56分過ぎ、説明は終了し、質疑応答に入る前に時間の関係で退席しました。
所感
実際に株主総会に出席しないと聞くことのできない経営者の思いを、今回直接聞くことができて、大変有意義な株主総会でした。そして、やはりこうして株主総会に足を運んで直接経営者の思いを聞かないとわからないことも多いことを実感しました。
何せ数字だけを見たら、ベインキャピタルが抜けた直後の第4Qで早速前年同期比減益に陥っており、「おいおい大丈夫か?」と不安になった株主も多いと思います(私もその1人)。
しかし、多くの株主が疑問や不安に思う点について事前に洗い出し、第4Qが減益に至った経緯をはじめ、今後の経営方針も踏まえて丁寧に説明がなされたおかげで、抱えていた不安を解消してくれるばかりか、今後も保有し続けたいという思いにさせてくれる内容でした。
時間の関係で質疑応答までは参加することはできませんでしたが、この説明のおかげで多くの株主の疑問や不安の多くは事前に解消されたのではないかと思います。
個人株主の出席が増えて、些細なことでもすぐに質問が出るような近年の株主総会の傾向の中で、これだけしっかり時間を掛けて丁寧に説明がなされれば、つまらない質問も未然に抑制できたのではないでしょうか。
株主がこんなにも大挙して押し寄せる人気ぶりのも、しっかりとした経営陣の考えを直接聞くことのできる貴重な機会であることを多くの株主が良く理解していることに他ならず、盛況ぶりにも納得。
まるでIR説明会のように詳細で丁寧な説明と、株主の疑問や不安を解消しようと配慮してくれる株主総会は初めてで、株を買い増ししたい気持ちに駆られるほど。すかいらーくの株主総会は、出席するだけで価値がある株主総会であることを感じました。