宝印刷(7921)第81回定時株主総会レポート
宝印刷とプロネクサスとの大きな差
2018年8月24日、宝印刷(7921)の株主総会に初めて出席しましたので、備忘録として記録しておきます。なお、細かいニュアンスについては記録者の都合のいい解釈が多分に入っている可能性もありますので、参考程度にご覧いただければ幸いです。
- 企 業 名 宝印刷株式会社(東証一部上場)
- 開催日時 2018年8月24日(金)10:00~
- 開催場所 ホテルメトロポリタン3階「富士の間」
- 特殊株主 無
- 議案内容
第1号議案 取締役8名選任の件
第2号議案 退任取締役に対し退職慰労金贈呈の件 - 株主人数 150名以上200名未満
- 手土産等 なし(入口で給水コーナーとブランケットの貸与あり)
報告事項のポイント
- 4セグメント全てで売上増となった。
- 翻訳及びIFRS関連の強化を進めている。
- 株主還元としては内部留保がしっかりできているので、利益はできるだけ配当に充当する。
- 中期経営計画2020の初年度は、売上・営業利益・当期純利益は達成。営業利益率・ROEは未達。
質疑応答
当社株の保有株数を見ると取締役8名の内3名が0株(未保有)。そのうち2名は株式の重要性をよく理解しているはずの証券会社出身者。他社では独立役員でさえ保有しているのにどういうことか。
②社外取締役、社外監査役の報酬が低い。監査業務等の比重が高まっているのに、軽視していないか。
①独立性の考え方は2通りあると思う。1つは株主の立場から意見する考え方、もう1つは利害から完全に離れて公平な判断をする考え方。当社はこれまで利害から離れてフェアな状態の立場をとってきた。
②業務内容からして適当と判断している。業務が増えればまた考える。
①取締役候補者津田氏は常勤なのに他社の社外役員を兼任しているが、職務上問題ないのか。
②世間では役員退職慰労金廃止の流れがある。引当金に1億円程度積まれているが、どう考えているか。
①津田氏は常勤ではなく非常勤である。表記がわかり難く反省している。津田氏には業務執行もお願いしており、独立役員には指定していないが、常勤と言うわけではない。
②当社では役員退職慰労金を報酬の後払いという性質と考えている。なお、当社はストックオプションはやっていない。業務をしっかりやってもらうための担保のようなもので、「積立はしているが払うとは決めていませんよ」と。払う時は総会に諮る。廃止の流れもあるが、しばらくはこの形で続けたい。
ディスクロージャーの印刷物は寡占状態でこれまで安定成長をしてきたが、今後の新しいチャレンジは?
印刷業界は右肩下がりの中、他の印刷会社に比べると特殊で値崩れしにくいが、3月決算企業が多いからどうしても仕事が重なる(集中する)。ある程度外注に出さないと全て固定費になるが、ディスクロージャー以外の印刷物も受けるようにしている。また、コンテンツ作りが強みなので、コンテンツと印刷のセットでの提供などを進めている。招集通知の電子化の流れがあり、株主の了解を取らずに電子化できるようになるので、すぐに激減するわけではないが、減ってくる流れをカバーしたい。
①中計2020で「飛躍のため」を謳っているが、具体的に何をやっているか。当社は営業利益が10%と高い(他の大手印刷会社でも3~4%程度)が、ディスクロージャー支援のライバル企業プロネクサスは12%と、見劣りしている気がする。デジタル化・システム化が遅れていることが理由か。
②損益計算書を見ても財務は健全であり、株主資本を眠らせているとも考えられる。どう使い、飛躍につなげていくか。
①同じディスクロージャーがメインだが、違いはある。IPO、有価証券報告書、招集通知等はガップリヨツだが、投資信託、REITはプロネクサスが強く、10倍くらい。投信やREITは企業のように決算期が集中しておらずバラバラなので、平準化しやすい。確かに利益率は高いが、決算期が集中する関係上、人海戦術な部分もあり固定費も高い。利益が出ていればいいが、反転する可能性もあり、利益を取っておく必要がある。システムは、X-Smartシリーズは負けていないと自負しているし、当社の方がいいと思っている。
②交渉の窓口は総務・経理の方が多いので、総務・経理向けのシステムを作る。また、日本において3,000社超の上場企業が今後6,000社に増えるとは思えないので、海外、特に東南アジアなどに広げていければと考えている。
①西日本の台風による当社及び従業員の自宅等の水害はどうだったか。
②障害者雇用者数の水増しなどは無いか。
①工場は大阪と東京にあるが、被害はなかったが物流面では苦労した。従業員の自宅への被害もなかった。ちなみに東日本大震災の際や阪神淡路大震災の時は従業員の実家が被災された時は見舞金を出した。
②必ず障害者手帳を確認しているので水増しは無い。
IPOの受注強化とあるがシェアは?シェアを取りに行きたいとのことだが、どのくらいまで伸ばして行きたいか。
IPOの受注については、当社は目論見書の受注数をベースにカウントしている(プロネクサスは違うカウント方法をしていたかと思うが)。毎年80~100社がIPOするがそのうちの40%が当社。いかに先に情報を掴み、お手伝いをするかが重要。
11時03分、質問が出尽くしたので、議案の審議に入り、11:07に総会は全て終了しました。
所感
3月決算企業の顧客を多く抱え、一時的に工場の稼働が高まる宝印刷。
それに伴い、どうしても固定費が高くなってしまうことから、平準化を進めたい意向ですが、専門性の低い印刷を受けては、固定費の回収はできても利益が薄く、中計2020の目標に支障を来す可能性もあり、その辺が難しいところだと思います。
その点、プロネクサスは決算期のバラバラな投資信託やREIT関連の印刷に強く、宝印刷に比べて10倍ものシェアを占めており、業務の集中を平準化できている点を知ることができて大変参考になりました。
営業利益率で宝印刷が10%程度に対し、プロネクサスは12%。稼働率の平準化によるものが大きいと推察します。
宝印刷は「ネットで招集」など、今後の法改正を見越して招集通知の電子化を先行して実践し、自社の招集通知も先進的に取り組んでいる点は評価できます。今回、実際に使ってみて、さらに改善の余地はありますが大変便利だと感じました。
強みであるコンテンツ制作やシステム開発といった新規分野の開拓、また、投資信託やREIT関連印刷のシェアの切り崩しが、今後の成長に欠かすことができないと考えており、動向に注目したいと思います。