【本】東京五輪後の日本経済/白井さゆり(小学館)
「東京五輪後の日本経済」を読んで思うこと
テレビ東京「Newsモーニングサテライト」でおなじみの白井さゆり先生の本。読んでから少し時間が経ってしまいましたが、読んだ備忘として書き留めておきたいと思います。
この本の中では、今の日本経済の現状と日本銀行の果たすべき役割を、元日銀審議委員の目線からわかりやすく解説しており、日銀が導入するマイナス金利政策などの経済刺激策と経済の関連性について、より深く理解することができる内容になっています。
普段経済ニュースや新聞などで、日銀の動きを何気なく見聞きしていますが、マイナス金利といっても、マイナス金利が適用されるのは銀行が日銀に預ける預金のほんの一部であることなど、知らなかったことも多く、「なるほど、そういうことだったのか」と改めてその役割や考え方を理解するにはちょうどいい、(慶応大教授だけに)教本にような一冊です。
(東京五輪後の日本経済/白井さゆり)
特に株式市場に目を向ければ、この5年余りの日銀の役割は大きいものがありました。アベノミクスに同調し、今や日本の株式相場は2%インフレを目指す日銀の異次元緩和政策によるETF買入れが株価を支えているわけですが、白井氏はこの異次元緩和はいつまでも続かないと警鐘を鳴らしています。
その理由は本著に詳しく書かれていますが、いつまでも異次元緩和を続けられる訳もなく、結論として2020年の東京五輪を待たずにテーパリング(買い絞り)に迫られるとしています。
日銀が異次元緩和策の出口に向かう動きが見られた瞬間、投資家は相場から蜘蛛の子を散らすように日本の株式市場から投資資金を引き上げ、株価も大きく下げる懸念があり、官製相場の終焉を迎えることになろうことは本著を読めば安易に想像がつきます。
その他、「国民の不安」から来る「日本型デフレ」も深刻であり、また、日銀の取る政策についても成功とは言い難い現状を、EUなどを例に挙げ、比較して解説しており、経済ニュースに対し、読む前よりもずっと関心を持って接することができるようになります。
この本を読んで、自分自身の投資方針にも変化がありました。
日本の先行きについては元々悲観的で、そのためにも海外株式などへ投資を進めているわけですが、日本株については更に悲観的な考え方を深めたため、日銀が買い支える日本株とJリートについてはインデックス投資は止め、個別株のみに投資する方針に切り替えました。また、マイホームも当面見送るつもりです。
オリンピック景気を喜んでばかりもいられない今の現状について知るほどに、リセッション入りした時のことも今から考えていかなければ、とリスク意識を再認識させられました。
2020年なんてホントあっという間。目先の相場だけでなく、相場を左右する日銀の動向や、その影響を受ける日本経済全体の動向など、経済全体に視野を広げるきっかけにもなり、将来展望を考える上で大変参考になる一冊です。