柴崎友香

あれから10年後のこと

映画「きょうのできごと」は大学時代、行定勲監督が映画化してそれを何度となく繰り返し観ていた思い出深い映画ですが、これまで小説では読んだことがなく。そんな「きょうのできごと」ですが、「春の庭」のポップに「”きょうのできごと、十年後”が発売される」と小さくお知らせが貼ってあり、思わず芥川賞作品よりもそちらの方に個人的関心が・・・。

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【本】きょうのできごと、十年後/柴崎友香(河出書房新社)

「さびしいね。そんなに簡単に、夢中になられへんね。もう」 けいとのポツリとこぼす言葉に心を両手で絞り上げられた気がしてひどく胸が痛んだ。いつか、この不安や焦燥感も忘れてしまうのだろうか。いずれ、もう戻れないことを悟る時が来て、諦めた瞬間に人は大人になるのだろうか。

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