【本】ジェフ・ベゾス 果てなき野望/ブラッド・ストーン(日経BP社)
すべては消費者のために・・・。
昨年読んだ本の中で特に面白かったのが「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」です。
この本は僕も大好き、Amazon.com(アマゾンドットコム)のCEOジェフ・ベゾスの自伝的一冊。アントレプレナー(起業家)の自伝は読み物としては面白く好きで良く読むのですが、この本は自分にとって「スノーボール ウォーレン・バフェット伝」(日本経済新聞出版社)以来のヒットかもしれません。
アマゾンが2000年に日本に上陸した頃を思い出すととても懐かしいですが、当時から何の違和感もなくあっという間に生活の中に浸透し、今や欠かすことのできないショッピングサイトに成長しました。
そんなアマゾンドットコムの成長の過程を、ジェフ・ベゾスのこれまでの軌跡を通じて知ることのできるのがこの本となっています。
(「ジェフ・ベゾス果てなき野望」/ブラッド・ストーン著)
「エブリシング・ストア」から「エブリシング・カンパニー」へ、大義のために突き進むジェフと、それに必死に答えようとする(健気にも映る)社員たち。社員泣かせの要求を次々と突きつけるジェフの発想力と強引さが、ちょっと性格のひねくれているけど憎めないアニメの主人公のように映ります。
そんなことから、この本が出版された当初、日本でもアマゾンドットコムはブラック企業と揶揄されましたが、文化の違いからか、はたまたベゾスの憎めない人柄からか、アマゾンの成長していく過程を知るほどに読者は(少なくとも自分には)ますますアマゾンの魅力に引き込まれていく思いがします。
日本でも問題の企業の”それ”とはまた違うように感じるのは、ジェフが目先の利益よりも顧客に支持されることを絶対唯一の信念としており、また利用者も日を追うごとに進歩するアマゾンの利便性を実感し、アマゾン中毒とも言えるファンも増えて、批判以上にアマゾンが人々の生活の奥深くまで浸透しているからなのかもしれません。
現にアマゾンは(少なくともジェフだけは)目先の利益を追っていないと言っていいでしょう。決算数字を見ても営業利益率は本当に薄利ですし、シェアのためなら赤字も厭わず打って出る姿勢には、投資するには躊躇してしまいますから。
(利益ではなくその先を追う姿勢に共感)
「・・・すべては消費者のために」と言うと聞こえはいいですが、ベゾスの闘いの後ろ盾(大義名分)はこの一言に尽きるのではないかと思います。
Amazonプライムの開発も、キンドルの格安な一律料金や新書と中本が比較して買えるAmazonマーケットプレイスの導入も、全てはユーザビリティ向上のためであり、その結果が現在に至るアマゾンの急拡大だとすれば、ジェフの唯一のよりどころは我々消費者の支持なのでしょう。
当時はまだ無かった書籍の評価や売上ランキングの導入に始まり、今やCDの視聴から本の立ち読みまで、リアルショップに行かなければできなかったことも当然のようにできるようになりました。おすすめ商品なんてまさにドンズバで出てきますし、アマゾンはますます進化を遂げています。
様々な既得権益をぶち壊し、様々な批判に真っ向から闘いながら、少しでも安く、品切れを起こさないようにするアマゾンの安心感と信頼性たるや、消費者である我々が一番わかっているはず(価格コムの安値の上位に常にあるアマゾンの安心感ったらないですから)。
この強引な経営者の無頼な姿勢にはまさに起業家の生きざまを感じてしまいますが、知れば知るほど応援したくなる気持ちが湧き、自立して力強く生きていくことに前向きになれる気にさせてくれる一冊は、読んでいてスカッとした気分にさせてくれるはず。
アマゾン中毒者のみならず、読み物として大変面白く読める、個人的にオススメの一冊となっています。
TAGS: Amazon.com・ジェフ・ベゾス・日経BP社 | 2015年1月23日