【本】ジム・クレイマーの”ローリスク”株式必勝講座/ジム・クレイマー著(宝島社)
読んでおきたい米国株投資の指南書
昨年から米国株投資を始めた私にとって、まだまだ日本株との違いに悩むことも多い昨今。
ジム・クレイマーの新刊が井手正介先生の翻訳により宝島社から発売されたのを受けて飛びつきました。
ジム・クレイマー氏はアメリカの投資啓蒙家で、CNBCのトークショー「マッド・マネー」でその人気に火が点き、今やウォーレン・バフェットと同じように全国のお茶の間に広く知られた存在とのこと。
私は井手先生の訳書ということで、前作「全米No.1投資指南役ジム・クレイマーの株式投資大作戦」でその存在を知り、ジムのバリュー株投資を基本スタンスとしながら、アクティブな投資手法については一部参考にしてきました。
それから8年が経過し、その間にリーマンショックなどを経験し、今回の著書では、昔のようなアクティブな印象は若干抑えられ、投資手法としてEPS(1株利益)の成長率、引いてはROEなどを重視した中長期的なバリュー株投資を強く推奨する内容になるなど、ジム自身に多少の変化がみられます。
バリュー株投資は井手先生の「バリュー株投資は「勝者のゲーム」!」にもすでに詳しいところですが、これから米国株投資を始めようとする人にとって、ジムがこれまで「マッド・マネー」で取り上げてきた企業やCEOなど、具体例を挙げながら、銘柄選定術を実践的かつ分かりやすく解説しており、大変参考になります。
(ジム・クレイマー著/ジム・クレイマーの”ローリスク”株式必勝講座)
ジムはこの著書を通じて、一貫して“ローリスクで中長期的に保有できる銘柄の選定方法”を、具体的銘柄や事例(本人の失敗談を含む)を踏まえて、また様々な切り口から紹介しています。
リーマンショック後、セクター別ETFが台頭し、優良銘柄もそうでない銘柄も同じような値動きを示すようになったことで、バリュー株投資は以前よりも妙味が出てきているとし、セクター全体が大きく売り込まれた時に優良なバリュー株をお得に買いやすくなったといいます。
そして、ジムが今後投資すべき未来のメガ・トレンドや、セクター毎の投資尺度(投資を判断するための目の付け所)を、テレビ番組さながら歯に衣着せぬ言い回しで単刀直入に解説しています。
また、市場を上回る利益を上げるためにはスーパー・グロース銘柄への投資は不可欠であるという見解のもと、アマゾン(AMZN)・グーグル(GOOGL)・スターバックス(SBUX)を使ったスーパー・グロース銘柄の評価方法とアップル(AAPL)との比較も掲載。
もし、どうしても自分で選びきれない人のために、ジム一押しのCEO21人を紹介し、彼らがいる限りはその企業の株を安心して持ち続けられるとして、ジムが絶対的に信頼を置くそれぞれのCEOにまつわるエピソードを語ってくれています。
ジムは最後に売却のタイミングを自らの失敗談を踏まえて伝え、思い込みと思い入れは大敵だとして締め括っています。自分も陥りやすい罠もたくさんあることに気付かされ、全編を通じて非常に参考になる内容です。
(訳者あとがきにも注目)
余談ですが、個人的には、訳者あとがきだけでも読む価値はあるかと思います。井手先生によるバリュー株投資がなぜ中長期投資として優れているのかを紹介し、ROE戦略の重要性を説く内容です。
また、これからの投資先として米国株を推奨する理由を日本との対比の元に語られています。これを読んで、昨年から進めている、米国株中心の投資にシフトしていく方針に改めて確信を持つことができました。
私は、決して立ち読みが良いとは言いませんが、この訳者あとがきだけでも読めば、バリュー株投資、米国株投資について読む人にとって強い関心が生まれ、本編の話に対しても意欲的に読みたくなるのではないかと思っています。
それにしても「マッド・マネー」のように民間の番組に企業のCEOが登場し、今後の展望や経営方針について赤裸々に語ってくれる番組があることはもちろん、ジムのような投資啓蒙家がいるなんて、本当にアメリカが羨ましくなります。