【投資】キヤノン(7751)第114期 定時株主総会に出席した所感
12月決算企業の株主総会が3月末に開かれ、今年もキヤノン(7751)の株主総会に行ってまいりました(結局、大塚ホールディングス(4578)はキヤノンと同日だったために断念しました)。
キヤノンについては、好決算に加えて積極的な株主還元に相次ぐ企業買収の実施と、このところいいニュースが続き、内容については大いに満足しておりますが、最近積極化しているM&Aと今後の見通しについて直接話が聞ければ、と思い、下丸子のキヤノン本社に足を運んでまいりました。
(過去の記事)
事業報告と後発事象
ネットワークカメラ関連のM&Aが2社続く
最近のキヤノンは企業買収案件が続き、久しぶりに話題が豊富でした。過去のM&A案件ついては5年前に買収したオランダ・オセ社以来の大型案件が2件立て続けに発表されました。
1社がビデオ管理ソフトウェアの世界最大手、デンマークのマイルストーンシステムズ社。もう1社が現在も公開買い付け中のネットワークカメラ大手、スウェーデンのアクシス社です。
ネットワークカメラ市場は毎年20%増の成長市場ですが、マイルストーンシステムズ社はビデオ管理ソフトウエア市場において世界No.1のシェア(市場シェア8%程度)であり、一方のアクシス社もパートナーを75,000社を擁し、ネットワークビデオソリューションの開発・販売において世界No.1のシェア(市場シェア24%程度)を誇ります。
(ネットワークカメラ全体を補完)
ネットワークカメラのアクシス社、ビデオ工学ソフトウェアのマイルストーン社、そして映像解析ソリューションのキヤノンが、三位一体となり、ネットワークカメラ市場のシェアを盤石なものにしようとするはっきりとした意図が見て取れます。
こうしてみると構造を分解してみると、企業買収で不足部分を的確に補完していることが良く分かります。
質疑応答
今回の株主総会での質問について、一部興味深い質問と、なるほどと思わせる回答がありましたのでご紹介します。
質問1(増配に自社株買い、株主還元し過ぎでは)
増配と自社株買いで合計約2,700億円と、当期純利益2,,548億円を上回る株主還元を実施することは、いわゆる”タコ配”状態で、株主還元し過ぎではないか。企業活動の目的は投下資本の拡大であり企業の成長である。利益以上にキャッシュを吐き出すことはもう成長を諦めたということか。
回答1(自社株買いは資産運用の一環)
企業活動の目的は投下資本の拡大だが、M&Aできるような良い案件はそう転がっているわけではない。M&Aに備え7,000~8,000億円程度のキャッシュを常に準備しているが、その間キャッシュをほったらかしで遊ばせておくのは適当ではない。
安全で高利回りの金融資産は、日本で最も高い格付けを誇るキヤノンの株式であり(スタンダード&プアーズでAAの他、ムーディーズAa1、格付投資情報センターAA+)、自社株買いは株主還元と同時に資産運用の一環でもある。
自社株買いは株主還元と同時に、会社の資金繰りの防御。米国ダウ・ジョーンズ工業株30種のうちメーカー12社の平均と比べても自社株買いが多過ぎるということはない。
日本では長く借金して経営する他金経営が根付いていた。これまで自社株買いで1兆円を超える株式を自社株買いしてきたが、自社株買いでセーブした配当金は約3,600億円。今回の増配と自社株買い(2,700億円)もこの中で賄えている。無理はしていない。
質問2(単体の業績下落への懸念とその理由は)
連結業績は上がっているが単体では下がっているが問題ないか。
回答2(海外生産6割による為替の影響)
結論は全く問題ない。連結が結果であり全て。
海外生産が約6割であるため、輸入コストも上がるため経常利益にも影響が出る。
質問3(プリンター事業強化は時代に逆行しているのでは)
紙が減っている中で、今後は電子媒体に特化するものと思っていたが、キヤノンはプリンター事業に力を入れている。紙が減ればプリンターの需要も減少し、いずれ事業が先細りするするのではないか。
回答3(紙は減っていない。時代に合ったプリント技術を)
電子媒体の台頭により減ると言われていた紙だが、実際には紙は減っていない。
印刷自体は、子供服へプリントするなど、広がりを見せている。また紙へのプリントも保存に適していることから見直され、使用のためではなく保存のためのプリンターの需要が伸びている。
パッケージ商用印刷も伸びており、これからの新しい用途に合ったプリンター、プリント技術の開発を進めていく。
質問4(プリンターを買い換えるたびインクが使えなくなる)
新しいプリンターが発売されるとインクも常に変わる。新しいプリンターでは前のインクが使えない。プリンターが壊れた場合、修理より買い替える方が安いが、インクをストックしていたので全部使えなってしまった。企業戦略の一環かもしれないが、消費者離れにつながってしまうのでは?
回答4(イノベーションが起こると発生する必要悪)
より良いモノを求める声に応えて新しいモノを提供したいが、どうしても古いモノは負担になる。冷たい言い方だがやむを得ないこと。
カメラもデジカメの誕生でフィルムもカメラ自体も不要になった。我々も事前に在庫を絞って減らすようにしている。
イノベーションが起こるとどうしても発生してしまう。進歩のためと我慢していただき、インクを買う時は考えてご購入いただきたい。
所感とお土産
増配、自己株買い、M&Aと手許資金の有効活用で好感
昨年に引き続き出席した株主総会でしたが、昨年の株主総会で「これからの動向に期待していて欲しい」という御手洗会長の発言の意図がわかった感じがして、株主総会に行って良かった。
カメラをはじめとするイメージングシステムビジネスユニットは飽和状態といった印象ですが、オフィスビジネスユニットではオセ社の買収効果が出始め、産業機器では成長著しいネットワークカメラ市場を攻める投資を積極化させており、心強さを感じます。
この1年間の動向を見てみると、企業買収で新分野のシェアを拡大しつつ、配当は無理のない範囲で増やし、株価が下がればすかさず自社株買い、と的確なキャッシュの利用方法に大変好感が持てました。
保有する日本株銘柄はだいぶ処分して減ってしまいましたが、キヤノンは無条件に安心して保有できる銘柄であり、当面ホールドすることは間違いありません。
今年のお土産は今治タオル
(株主総会のお土産)
さて、株主総会のお土産ですが、今年はキヤノンのロゴ入り今治タオルでした。安心の日本製。これから生まれてくる赤ちゃん用に有益に利用させていただきたいと思います。
TAGS: 7751 | 2015年3月31日