【本】リップヴァンウィンクルの花嫁／岩井俊二（文藝春秋）
岩井俊二監督の映画は、学生時代に「リリィ・シュシュのすべて」を観て以来、ずっと追い駆けていますが、時にはハッと息を飲む美しさを、時には胸元をえぐり取るような残酷さを湛えた映画に魅了されてきました。
待望の新作「リップヴァンウィンクルの花嫁」の公開が発表され、同時に監督自ら書き下ろした小説がリリースされ、映画を観る前に読むべきか、葛藤ののち手にしたわけですが･･･。
そこには、優しさと切なさに満ち溢れた物語が広がっていて、一夜にして読み耽り、それからこれまで何度も読み返しました。ここまで引き込まれた小説も久しぶりかもしれません。
「この世界はさ、本当は幸せだらけなんだよ」
最後の１ページを、僕は何度も何度も繰り返し読み返し、その余韻に浸る。
そこに残されたメッセージは永遠に届くことはないが、しかしそれは、確かにそこに存在していたことを証明する記憶の断片でもあることに、ちょっとだけ少し救われた気持ちになる。
そう思うのは僕だけだろうか･･･。
（リップヴァンウィンクルの花嫁／岩井俊二）
小説の感想はネタバレになる可能性があるので多くは書けないけれど、岩井監督の文才たるや、驚かずにはいられません。
映画の公開が待ちきれずに手に取ったけど、読んで良かった、と心から思えた１冊でした。
今回の岩井俊二の世界はこれまでになく、切なくも大きな幸せに包まれていて、本当の幸せとは何かをきっと全ての読者が考えさせられることでしょう。
映画の公開は３月26日、今から待ち遠しくて仕方がありません。
