【本】サラリーマンこそ自分株式会社をつくりなさい/吉川英一(ダイヤモンド社)
昇給したはずなのに一向に手取りが増えないサラリーマンの現実
年に1度の定期昇給はあれども、それ以上に社会保険料や税金も年々上がって、一向に増えた気がしない我が家の懐事情。総支給額に対し、控除される金額の多さに唖然とします。
無抵抗なサラリーマンから有無を言わさず、安全かつ確実な源泉徴収という形で、我々が給料を受け取るより前にがっつり搾取される、この悲しい現実。法律で保障されている給料全額払いの原則も、賢い役人たちの前ではなすすべもありません。
(一方で、サラリーマンは自営業者と比べて年金受給などではメリットも当然多いので、一概に悲観べきではないのでしょうが)
年々差し引かれる社会保険料や税金が増えている個人と比べ、次第に緩和傾向にあるのが法人でして、この本では「自分株式会社」を開業し、合法に節税し、お金を残す方法について解説しています。
大きく異なる個人と法人の税制の違い
(「サラリーマンこそ自分株式会社をつくりなさい」/吉川英一)
個人は所得に応じて算出された税金に対し、一部税額控除を受けられるのに対し、法人は課税される前の収入から直接経費を差し引くことができます。当然、課税対象額が小さくなればなるほど、納める税金も小さくなります。
帳簿上赤字になるかならないか程度まで利益を圧縮し、課税を減らす有効な方法や、実際にキャッシュが出ていかない形で費用計上をする方法、簿外でお金を残す方法など、実践的かつ「法人化するとそんなことまでできちゃうの!」という驚きを持って読み進めることができます。
報酬型ビジネスとストック型ビジネスの両立
また、「自分会社」を立ち上げ、開業するならば原価率の低い報酬型ビジネスと、定期的にキャッシュが入ってくるストック型ビジネスの両立を強く推奨しています。
前者では税理士や行政書士などフィーが発生するビジネスであり、後者では不動産賃貸業などの不労所得を得られるビジネス、ということになります。
著者がこれまで成功してきた軌跡と重ね合わせ、不動産仲介業と不動産賃貸業の両立が、イコール、報酬型ビジネスとストック型ビジネスの両立になるとのこと。
この本では、法人化のメリットを紹介するというテーマの裏で、不動産業での独立を強く勧める側面もあって、不動産業以外でのサイドビジネス全般の話を期待している人にとっては若干焦点が限定的かもしれません。
とは言え、読んでいるうちにその気にさせられる内容で、先々独立を目指す人にとっては夢も湧き、大変モチベーションも高まります。
法人化するメリットと”法人化しないことのデメリット”
(実際はサラリーマンから独立し、法人化するまでの過程が難題)
この本の全体を通じて感じることは、法人の会計上・税法上のメリットと、それ以上に、サラリーマンのまま一生働き続けることのデメリットを強く感じます。
法人化するだけのメリットを享受できるくらいの収入を得るまでにはハードルが高いでしょうが、「自分株式会社」を立ち上げて、小さくても良い会社を作ることに夢が見れたり、節税の面白さを実感したりと、読んでいるだけでも楽しくなってきます。
問題は、法人化するメリットを享受できるまでには、売上で1,000万円、課税所得で400万円が一つの目安とのことなので、これからサイドビジネスを始めようという方にとっては、まだしばらく先の内容に感じられるかもしれないこと。
サラリーマンをして生きる傍ら、サイドビジネスで課税所得400万円を稼ぐなんてそう簡単なことではないはずで、そこまで到達できたら、この本はさらに面白く、より実践的な参考書になるでしょう。
そこまで到達する過程が一筋縄ではないので、これを読んで実際に行動を起こすか、それとも諦めるかは人によって分かれるところかもしれません。
企業に飼い慣らされた人にとって考えさせられる一冊
自分がこの本を手に取ったのは何も副業をしようという理由からではなかったのですが、先日誕生日を迎え、今後の将来のこと、企業人としての在り方など、改めて見つめ直してみようと思った時に店頭で見かけた1冊。
最近子育てと仕事に流され気味の生活の中で、いささか疲れていたこともあり、今経っている自分の位置を確認すると共に、一度立ち止まって考えてみるいいきっかけになりました。
30代も半ばを過ぎ、客観的に自分ももう結構な齢になったなぁとつくづく感じますし、子どもも生まれ、リスクを冒す年齢でもなくなってきたため、嫌が応にも慎重にならざるを得ませんが、一度きりの人生、今後どうあるべきかを考えさせられます。