【本】SHOE DOG~靴にすべてを。/フィル・ナイト(東洋経済新報社)
世界一のスポーツ用品メーカーと言えば米国の「Nike」(ナイキ)は誰もが認めるところですが、その歴史は1972年からとAdidas(アディダス)やPUMA(プーマ)と比べその日は浅く、フィル・ナイト氏が一代で築き上げました。
そんなナイキを立ち上げたフィル・ナイトと、画期的な靴を次々と世に送り出したSHOE DOG(靴作りに憑りつかれた者)たちの軌跡を描いたのが本書になります。
(SHOE DOG~靴にすべてを。/フィル・ナイト)
ナイキは米国のスポーツブランドで、日本とは縁遠く思う人も多いかもしれませんが、実は創業当時から日本とはとても関係が深く、例えばナイキの前身であるブルーリボン・スポーツ社(以下「ブルーリボン」)が創業したのは1962年ですが、創業のきっかけはオニツカ・タイガー(現在はアシックス傘下)との販売代理店契約がきっかけでした。
また、全米でタイガーシューズの売上を順調に伸ばす一方、急成長を続けるが故に資金繰りに窮し、ブルーリボンは一度不渡りを出して倒産の危機を迎えますが、その時ブルーリボンを救ったのも、やはり日系企業である日商岩井(現在の双日)だったのです。
靴は飛ぶように売れるものの納期は常に遅れキャッシュは慢性的に欠乏状態、難題山積の中で今度は事業の根幹であるタイガーシューズの代理店契約を解消されるという最大の危機を迎えますが、その逆境の中で「ナイキ」ブランドが誕生します。
その後のナイキの活躍ぶりは広く知られるところですが、フィル・ナイトを取り巻く個性豊かな登場人物や、綱渡りの経営や神経をすり減らす交渉、息を飲む法廷闘争など、本を読む手にも汗を握り、ぐいぐい引き込まれる面白さ。
池井戸潤氏の小説・ドラマ「陸王」を楽しまれた方も多いかと思いますが、時にノンフィクションはフィクション以上に感動的で、映画やドラマ以上にドラマチックなもの。個人的には小説以上にずっと面白いと思います。
(2017年読んだ本の中でベスト本)
これから新しい年を迎えるに当たって、ぜひ一読されてみてはいかがでしょうか。思わず走りたくなるような、ウズウズさせる内容に、きっと前向きに進む勇気を与えてくれるはずです。
そして、私のようなナイキファンはこれまで以上に、アンチ・ナイキ派の方もきっと、ナイキのことが好きになるはずです。
2017年12月29日