【本】ディズニーCEOが実践する10の原則/ロバート・アイガー

今年の短い夏休みは、ディズニー会長で前CEO ロバート・アイガー氏の本書を読みふけりました。
本書では、数々の企業買収と変革により、ディズニーがメディア界の頂点に上り詰めるまでの軌跡を追うと共に、世界最高の経営者と称えられたアイガー氏の金言に触れることができます。
ABCテレビの雑用係だったアイガー氏がディズニーのCEOとなり、フィクサー、マーベル、ルーカスフィルム、そして21世紀フォックスと、数々の企業買収でメディア最大手に上り詰める過程には心躍り、引き込まれるように夢中でページをめくりました。

ウォルト・ディズニー(DIS)には少額ながら投資をしていることもあり、企業研究の面でも勉強になることが多く、大変有益な一冊でした。
正直に申せば、私はこの本を読むまで、ディズニーはキャラクター商売で、ファンさえ付けば延々と売れ続けるドル箱商売だと誤解していました。それゆえ、最近のディズニーの業績の浮き沈みには多少なりとも不満を覚えていました。
しかし、過去のフィルム作品や、それに付随するキャラクターといった資産(レガシー)を風化させることなく、未来へと守り続けていくことがどれだけ大変なことかを思い知るに至り、同社に対し大きな考え違いをしていたことに気づかされ、猛省しました。
フィクサーの筆頭株主だったスティーブ・ジョブスも、スターウォーズの生みの親であるジョージ・ルーカスも、生み出した作品を守っていけるのはディズニー、そしてアイガー氏しかいないと、ある意味託す形で企業買収が実現しています。
これらレガシーを守る一方、コードカット(ケーブルテレビの解約)やネットフリックスの台頭などで激変するメディア環境の変化には拒絶することなく、むしろ積極果敢に変革を進め、時にはこれまで築き上げた収益基盤を自ら破壊しても将来に布石を打っていきました。
この守りと攻め、一見相反する難しい企業経営を同時に実現していったアイガー氏の手腕は、やはり傑出した経営者であると強く感じました。
そして何より、この本を通じてアイガー氏の信念と相手への配慮に触れ、読了後は仕事に対する取り組み方や考え方を見直す大変いいきっかけになり、読者にとって大きな収穫になります。
おかげで自分も、今の仕事を「これまで以上に頑張ろう」と思えるほど、大いに触発されました。読めばアイガー氏の信念と思いやりのある仕事ぶりに憧れ、誰もが真似てみたいと思えるはずです。
2021年12月にはいよいよアイガー氏が会長職を退任します。
ディズニープラスの動向や21世紀フォックスとの相乗効果の実現など、アイガー氏が去った後のディズニーの行方は気になりますが、培われたマインドはキャラクター達と同様、アイガー氏の経営に対する信念は企業の中で大切に受け継がれていくことを願っています。
この本を通じてディズニーという会社が好きになりましたし、投資の面では改めて買い増ししたいと思え、恐らく近いうちに実行に移すことになりそうです。