「映画:フィッシュマンズ」あの日突然止まった20年余りの時間が再び動き出す

音楽・カルチャー

2年前、クラウドファンディングに申し込んだ「映画:フィッシュマンズ」がとうとう完成し、7月の初めに世田谷漁業組合(映画フィッシュマンズの製作スタッフ)から特典と共にムビチケが届きました。

ミニシアターが中心、しかも上映回数や期間も限られており、行けるか不安でした。最悪の場合、特典のDVDがまた届くはずなので諦めようと思っていましたが、やはり映画館で観たくなり、休暇を取って新宿バルト9まで足を運びました。

フィッシュマンズは、僕が20年前に心酔していたバンドだ。そのフィッシュマンズの映画化が決定した。2019年2月にはクランクインをして既に撮影に入っており、2020年の公開を予定している。フィッシュマンズの映画を製作するためにクラウドファンディングで資金を募っていることは昨年のうちに情報が入っていた。でも今は亡き佐藤伸治抜きのフィッシュマンズにはどこか違和感を感じていて。あの頃のフィッシュマンズが今も独り歩きして、全然知らない別のモノに変わってしまうのではないかという不安。自分の中にある20年前の輝かしい...

結果的には映画館に足を運んでおいて本当に良かった。映画館に行かぬままDVDで観ていたらきっと後悔していたはず。まるでライブを見ているような臨場感に、始まった瞬間から心を掴まれました。

しかし、この映画の本当の見どころは、佐藤伸治という人物を中心に回るフィッシュマンズという”現象”を関係者の証言により解き明かす、瞬きすら憚られるほどの貴重な記憶の記録。

挫折、苦悩、そして成長の先に見る孤独と葛藤・・・、はじめは佐藤伸治を慕い集まった仲間たちが1人、また1人と離れていく喪失感。そして更に研ぎ澄まされていく音楽。いずれ誰も寄せ付けない孤高の存在に。

3時間の上映時間がこんなにも短く感じるなんて思いもしませんでした。あの日突然止まった20年余りの時間が、映画が流れている間だけは進んでいるような気がして。幕が下りてからも座席からしばらく動けないほどの脱力感。

たった3時間で20年分のポッカリ空いた穴を埋めるには全然足りない。まだまだ映画の中のあの頃にいたいと思ったのが正直な感想。しかし、自分の中で止まっていた時間はこの映画を機にようやく動いた感があり、あとは自らのペースで進めていくしかないのでしょう。

身の回りのありふれた言葉で綴られた歌がこれほどまでに心に響くのはなぜだろう。ずっと感じていたその答えがこの中にあるような気がします。

狂気の中から紡ぎ出された言葉はどこまでも純粋で、優しく心に響き僕らを今日も生かしてくれている。それは悲しい時に優しくされると不意に涙が込み上げてくる感覚にも似ていて、フィッシュマンズの音楽は今もずっとそばにあることを再認識させてくれます。

この映画、そして映画制作に携わった関係者の皆さんに心から感謝を申し上げます。最後に、クラウドファンディングという形ですが、携わることができて光栄でした。本当にありがとうございました!

映画の余韻が冷めないうちに特典のカセットテープを聴きたいのですが、さぁどうやって再生したものか・・・。

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