【本】「考える力」をつける本/轡田隆史(三笠書房)

【溢れかえる情報化社会だからこそ必要な力】

突然ですが、皆さんは日頃から本をお読みになるでしょうか。文字離れが進む昨今ですが、知の宝庫はいつの時代も本であることに微塵の変化もありません。

毎日洪水のように浴びせられるテレビやインターネットの情報に辟易する一方、必要な情報は自ら選り分け、真贋・有益無益を精査しなければいけないのが現代の情報化社会の現状です。今日はそんな情報についての話を少し。

 

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「考える力」をつける本/轡田隆史(三笠書房)

人々は偏った情報や断片的な情報、根も葉もない噂などを真に受け、受け売りし、あたかも自分の意見のように語り振る舞うことがある。その発せられる言葉には自分たちの考察が介在する様子はなく、意思を持っていない。多くの情報を自分たちで処理できず、考察を巡らせることのないままアウトプットしてしまっているのだ。

 

著者は朝日新聞で8年に渡り、夕刊一面のコラム「素粒子」を一人で手掛けてきた元記者。限られた時間の中、これまた極めて少ない文字数の中で日々変化する森羅万象を批評するため、著者は記事を書くために必要な「考える力」を最大限に引き出すことに注力してきた。

そんな著者も松本サリン事件では、被害者を加害者扱いして報道した苦い経験を持つ。そんな経験を踏まえ、著者はこれまでの記者人生を通じて、情報を読み解く力、考えを深めて自らの考えへと導くノウハウを磨いてきた。それゆえ、これらの経験を通じて語られる言葉には深い考察と発信者としての責任に満ちている。

 

【“考える力”は自分のモノへと昇華する力】

文中には多くの書籍や自らの記事の一部が引用され紹介されているが、一見どんなに取っつき難い内容でも著者のフィルターを通して語られる内容には、奥深さと親近感を覚える。そして、その文章には全体を通じて「考える力」を体現していることが、否応なしに知ることができ、大いに感銘を受けた。

本の中で著者は、買って積んでおくだけの「ツン読」をあえて勧めたり、文字にすることで同時に考えることになると説き、考える際には書くことを勧めたりと、文字に親しみのない人にとっても親近感を湧かせる。何より、著者のウィットに富んだ文章を読めば、これまでの経験や見識の高さを知ることとなり、文字の持つ力にきっと自然な関心を持つことだろう。

 

物事に対し深く考察を巡らせる習慣が身につけば、どんな難解な書籍であっても考えを巡らせるきっかけになる。ページをめくることが面白く感じられるようになる。それは子供の頃に知識を得るための読書とはまた違った楽しさあることを教えてくれる。

本でなくてもいい。どんな小さな新聞記事にも考察を巡らせるチャンスが潜んでいる。考えることは自分の中で情報を昇華することに他ならない、と思えればそれ自体が楽しくなる。読書を通じて自分の考えを巡らせ、自分の血肉に変える面白さを改めて教えてくれる一冊となっている。

 

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読み終えて、柔和で知性溢れる文章を目にし、純粋に「こんな文章を書けるようになりたい」と憧れました。日々ノートに思うままペンを走らせ、気になる書籍は山積みの状態。この本で勧めることは自然と体現していた自分ですが、「考える力」をつけない限りは文章も上達もしないのだと感じます。

今やスマホがあれば何でも知ることのできる時代。こんな時代の今だからこそ、「考える力」の必要性を強く感じた次第です。

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