【本】億男/川村元気(マガジンハウス)
お金と幸せの答えを求める30日間
小説をレビューするというのは人によって感じ方の振れ幅が大きく違うので違和感を持たれることもあるかと思い、読んでからしばらくの間、書こうか、書くまいか、と悩んでずっと放置していたのですが・・・。
元はと言えば、自分がその本を読んだことで何かを得られたことを確認するためにはじめたレビューですから、すべては自分のためだったと思い出しました。
きちんと本にお金をかけて投資した分、感想も感じたままに書こうと思って、今パソコンに向かって書いています。
(正直、誰が自分のレビューなんて参考にするか、とも思いますしね。。。)
(億男/川村元気(マガジンハウス))
連帯保証人となったことで3千万円もの借金を抱え、一家離散状態にあった一人の男が、偶然手にした宝くじの当選により突如として3億円もの大金を手にすることからストーリーは始まります。
主人公の一男は、突如として大金を手にした人間の不幸な末路を知るにつれ戸惑いと不安が生まれ、お金とは何かという答えを探しに、事業で成功し億万長者となった大学の親友・九十九に会いに行く。しかし、九十九は一男の3億円と共に忽然と姿を消してしまう。お金とは何か、幸せとは何か。一男は、消えた九十九と3億円を辿る中でその答えを見出していく・・・。
というのが大体のあらすじでしょうか。
一男が3億円を手にした際によぎる不安や個性的な登場人物たちの描かれ方、そしてドラマチックな展開など、人の描写がとてもわかりやすく、またストーリーに伏線が効いていて面白い。
老若男女問わず、幅広い層にウケる面白さと読みやすさで、発売されてからもいまだに売れ続けているベストセラーだという理由は良くわかります。
こういったお金に関する教育教材となる読み物が最近増えてきているような気がして、お金に関する教育が遅れている日本にとってはとてもいい傾向なのかもしれません。
誰もが関心はあるけれど学校教育では触れないお金にまつわる教えやその正体について、特に子どもに読ませるのにはユーモアもあり、「お金とは何か」という漠然といた疑問を解決に導くという意味で意義深いものであるように感じます。
(自分と同世代の川村元気氏は実に多才)
個人的な感想ですが、映画のような展開の面白さを感じる一方で、お金にまつわる話だけに「そう面白くは転がっていかない」という冷めた自分もいて、読みながらストーリーに完全には入り込めない自分がいました。
先入観が足を引っ張るようで、そういった意味で「富者の遺言」で語られるお金の方が泥臭く、リアリティや臨場感を持って読むことができたように思います。
(過去の記事)
しかしながら、お金を題材にした小説は少しずつ増えてきており、今後1つのジャンルとして確立されていくかもしれませんね。
そういった意味でこの小説は、1つの大きな流れを作った火付け役だったのではないかと感じています。
TAGS: 川村元気 | 2015年2月28日