【本】読書は格闘技/瀧本哲史(集英社)
読書の前に読んでおきたい「読書指南書」
先人の経験や知恵を短時間で吸収できる読書の有益性は誰もが知るところではありますが、本が「知の源泉」であるとは言え、「良書」と聞くだけでその内容を鵜呑みにしたり、本に向き合う姿勢も受け身になってしまいがちです。
著者である瀧本氏は、人によって「良書」の定義は異なること、そして自分の見解と相いれない内容であっても批判に値するなど、読書を通じて思考を巡らせることのできる本は「良書」であると定義づけています。
また、世間に「良書」と呼ばれるロングセラー本の中でも、いわゆる「古典」とされ、一見時代遅れな内容に感じる本については、現代の私たちが読み解く上で必要な方法についても触れています。
(読書は格闘技/瀧本哲史)
著者は、「本の内容は常に正しい」という認識から、「あくまで1つの見解」として読み、そこに自らの意見をぶつけることで、字面を追うだけではない、本当の意味での「読破」ができると言います。
こう書くと一見難しそうですが、実際この本の中では、テーマごとに見解の異なる本をぶつけ合わせ、争点や主張した時代背景を炙り出し、読者を積極的に議論に参加できるよう促しており、大いに参考になると共に、この比較が大変興味深く面白い。
このように、あるテーマに対し、古今のアプローチの異なる本同士をぶつけ、さらに読者の見解も加えバトルロワイヤルすることで新たな学びが生まれるということを、この本を通じて身をもって実感できます。
(名著も批評読書の対象に)
この本の中では、D・カーネギーの「人を動かす」や、エリヤフ・ゴールドラットの「ザ・ゴール」といった多くのビジネスマンに読まれている名著もまた、多分に漏れず批評読書に晒されており、字面を追うだけでは得ることのできない、深い思料を巡らすことができます。
過去にこのブログでご紹介したこの本も取り上げられています。
(過去の記事)
見解の異なるものを比較し、深く掘り下げることで、単に「Aか、Bか」ではなく、AとBそれぞれから学ぶことがあり、受け売りではない自分の意見を導き出すことができます。
自分の思考と相反する見解の本であっても、相反する主張を「論破」するのではなく、一度受け止めて、自らの主張をより強固にするという意味では、批評読書は大変意義深いと感じます。
日常から読書習慣が身に付いている人にとっては、さらに一層深読みし、自分に消化するための読書指南書であり、本当の意味で本の内容を「読破」するために役立つ一冊となっています。