【CD】OWEL/Dear Me
久しぶりに音楽の話でもしようと思う。
2013年は僕にとって音楽の当たり年だった。その中でも一番の収穫は、ニュージャージーのインディーズバンド、OWEL(オーウェル)のデビュー作(セルフタイトル)であったことに異論を挟む余地はない。
ファーストでは彼らの器用さ、多彩さを証明して見せた。
繊細さの中に荒々しさを持ち合わせ、静と動を自在に行き来する彼らの音楽に僕はすっかり魅了され、今後の彼らから届けられるであろう音楽に大いに期待をした。
しかし一方で、微かな不安も覚えた。
ファーストで鮮烈なデビューを飾ったのに、2作目で振るわなかったアーティストを多く見てきたからだ。1作目で高い評価を得ると、それを越えようと2作目は大抵苦悩する。
余談だが、僕は昔から気に入った作品に触れると無条件にそのアーティストを追い駆ける癖があったから、2作目で見事にズッコケた例をたくさん見てきたし、僕もそれらに付き合って駄作に散々お金をつぎ込んできた。
そんな過去の教訓から、必ず視聴してから手を出すかを決めるようになったのはここ数年のことだ。AmazonやTower Recordなどでも、今では事前に視聴ができる時代になり、本当に便利な世の中になったものだ、とつくづく思う。
・・・話を彼らのセカンドアルバムに戻りたい。
ファーストのリリースから早3年。それまでEP(「Every Good Boy」)の他は大きな動きのなかった彼らだが、2016年末に満を持してフルアルバムがリリースされた。
例のごとく事前の視聴により、自分の杞憂は全くの取り越し苦労であったことに、ホッと肩をなでおろし、じわじわと嬉しさがこみ上げてきた。
「待っていたのはこの音楽だ!」と。すぐに海外から今作を取り寄せたのは言うまでもない。
(OWEL/Dear Me)
「Dear Me」と銘打たれたアルバムは、まさにOWELが自分たちの音楽をさらに突き詰め、今後の方向性を指し示した道標ともいうべき作品だ。
エモーショナルな彼らの音楽はさらに純度を増し、音に、言葉に、繊細さと力強さが滲む。暴力的にも情緒的にも自在に表現できる彼らが、自分たちの音楽とは何かを突き詰めた形がそこには集約されている。
全12曲のいずれの曲にも、彼らの音楽の核心とも言える、繊細で優しく、ピュアでいて、しかし力強い音楽が、一貫して流れる。
もうファーストの時のような新鮮さはないし、器用さをアピールすることもない。しかしそれは、聴く人を共鳴させ、顔を上げてまた歩き出す僕らの背中を押してくれる力強さを感じることだろう。
いつかはこの目で、この耳で、彼らの音に直接触れられる日が来ることを願って、今日もまたプレイボタンを押す。
TAGS: Owel | 2017年5月22日