【本】ラストレター/岩井俊二(文藝春秋)

読んだらアウトプットしなければと思いながら、書評を書くのは思いの外難しい。ただ、このまま書けずにいるとブログの更新自体に支障が出る、かと言ってネタバレになってもいけない。

何だか漠然とした内容で、書評などと言うとそれこそおこがましい内容ですが、小説を読んで自分が感じたままに書き留めたいと思います。

これは君の死から始める物語だ。君が本当に愛していただろう、そしてきっと君を愛していただろう、そんな君の愛すべき人々の、ひと夏の物語でもある。そして、同じそのひと夏の、僕自身の物語でもある。天国に旅立ってしまった君に充てた、僕からの最後のラヴレターだと思って読んでもらえたら幸いである。

(本文より)
ラストレター/岩井俊二(文藝春秋)

恋愛や友情など、大切にしていたはずのものから次第に距離が遠ざかっていく20代。その気になればすぐに取り戻せるという根拠のない自信が瓦解し始める30代。そして、周りは今も変わっていないはず、と背けていた現実と否応なしに向き合わなければならなくなる40代。

読み手の年代によって受け取り方は様々でしょうが、アラフォーの自分には感じ入るものがありました。多分自分の年代が一番響くものが多いのではないでしょうか。

前作「リップヴァンウィンクルの花嫁」を読んだ時の感動を今も鮮明に覚えてます。ただ、小説の出来が素晴らしかった分、映画には若干の物足りなさ、言葉を選ばずに言えばちょっとしたガッカリ感を感じたのも事実。

読む人のペースでストーリーが進行できる小説と、限られた時間の中で完結させねばならない映画とはやはり相容れない境界は確実にあるのだと。作家と監督が同一人物でもそう感じるのだから、自分の中で確信に近い実証を得たのが前作でした。

だから、今回の「ラストレター」も、正直なところ映画を見るまでは読むのを待つべきか悩んだわけですが(結局好奇心が勝り読んだわけですが)、今作はまるで映画向きのストーリー。それを強く感じる内容でした。

映像化への期待が高まる1冊

「リップヴァンウィンクルの花嫁」でも感じた、文字からありありと浮かぶ情景。ちょっと背景描写が説明的でまどろっこしさを感じることもあるけれど、そこは映画化前提の書き下ろし。映像にすればスッキリ解決すると思われます。

今作は「リップヴァンウィンクルの花嫁」ほど独創的なものではなく、どちらかというとありふれた現実的な内容ですが、だからこそ岩井監督がこの物語をどう録り下ろし、映画「Last Letter」として作品にまとめ上げるか、期待の高まる一冊でした。

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