音楽・カルチャー
ここ数年、自分が心酔しているアーティストがOWELとFINK。そのFINKの新譜が届きました。国内盤はリリース予定がないため、今回も輸入盤を取り寄せて毎日聴いています。
OWELの「Paris」は、控えめに言って「最高!」だ
4月1日、新年度を迎えた朝の通勤電車。電車に揺られながら聴いた彼らの新たな音楽に、頭の中でファンファーレが鳴り響くかのように、胸のすく思いがした。半年近く待ったOWELのフルアルバム「Paris」。待望の新譜ゆえに自ずと期待は膨らんでいたが、その期待値の遥か上を行く作品であると確信した時の昂揚感。満員電車の中、自然と顔がほころび、ほくそ笑んでいたに違いない。セルフタイトルのデビュー作を聴いた時に感じた彼らの無垢な美しさは一向に濁ることなく、むしろリリースを重ねるごとにその純度を増し、優しさとナイーブさ...
FINK/Bloom Innocent
しかし、FINKは「Hard Believer」以降、音源をリリースするたびに音楽が深化していき、聞き手を試すように、または振るいにかけるように難易度を増しているように思います。
【CD】FINK/Hard Believer
熱帯夜に聴きたい、静かに激しく響く音楽通奏低音のように絶え間なく爪弾き刻み続けられるギターの音。時にいら立ちのような激しいピッキングが響き渡ると、静寂の中に一気に緊張が走る。ブルージーなギターにけぶるような声が、言葉少なに、そしてシンプルに溶け込む。その音楽は幻想的で壮麗さすら感じる。それは、例えるなら地中で静かに燃え滾るマグマのような、とても静かだが、激しさを秘めた音楽だ。 (FINK/「Looking Too Closely」)FINKのこれまでの遍歴は稀有で、実に多才だ。DJとしてキャリアをスタートさせ、シンガ...
有り体な表現でいえば、観念的で魂を揺さぶる音楽。音楽でありながら静まり返るような、いや静けささえも音で表現するような静かな音楽だ。
そこにあるのは耳当たりの良さではなく、耳を研ぎ澄まさなければ感じ取ることができない孤高の音。繊細な音が震わせるのは鼓膜の先のもっと奥深くで、琴線に共鳴し震わせる。
最後の灯が一瞬煌めいて燃え上がり、そして潰える刹那の瞬間をこのアルバムに感じる。
まるで信者が神にすがるように、音の奥にある本質に耳を傾ける姿勢を聞き手に求める。ただし、そこにあるのは心地良さでも安らぎでもなく、混沌とした空間のみ。
気軽な気持ちで聞くには、はっきり言ってオススメできない。
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2019年11月19日