【CD】FINK/Hard Believer
熱帯夜に聴きたい、静かに激しく響く音楽
通奏低音のように絶え間なく爪弾き刻み続けられるギターの音。
時にいら立ちのような激しいピッキングが響き渡ると、静寂の中に一気に緊張が走る。
ブルージーなギターにけぶるような声が、言葉少なに、そしてシンプルに溶け込む。
その音楽は幻想的で壮麗さすら感じる。
それは、例えるなら地中で静かに燃え滾るマグマのような、とても静かだが、激しさを秘めた音楽だ。
(FINK/「Looking Too Closely」)
FINKのこれまでの遍歴は稀有で、実に多才だ。
DJとしてキャリアをスタートさせ、シンガー・ソングライターに転身。
ジャンルを問わず様々なアーティストの楽曲への参加を経て、現在は3ピースバンドとなり、FINK自体バンドの名称でもあるという。
今作は大括りすればブリティッシュ・ロックと言えそうだが、事はそう簡単ではない。
ルーツであるブルースやフォークに、ダブやエレクトロニカ(電子音楽)など、キャリアに裏打ちされたエッセンスが随所ににじみ、蒸留された原酒のようなシンプルさを持ちながら、その味わいは実に複雑で奥深い音楽を放っている。
それは耳に心地よく響き、余韻を残しながらすっと心の中に消えていく。心の内に響く音楽だ。
(ボーナストラックも必聴)
夏のはじめにこのCDを手に取る機会に恵まれ、それからというもの、とにかくこればかり聴いています。
もうすっかりハマってしまいました。
特に「Looking Too Closely」からの終盤にかけては完全に引きずり込まれます。
暑さが増すほどに、聴けばトリップする感覚、と言うと何か誤解を招きそうですが、中毒性があり、夜な夜なイヤホンを耳に挿しては聴くことが習慣になっています。
ちなみに今作の日本盤のボーナストラックには、Nirvana(ニルヴァーナ)の「In Bloom」のカヴァーが収録されており、これがまたFINKらしいアレンジで味わい深くて好きです。
熱帯夜にじっと耳を澄ませたい音楽がここにあります。
TAGS: Fink | 2014年8月7日