【CD】FINK/Resurgam
過去を許し、再び立ち上がるために
ダブを根底に宿しながら、こんなにも多彩な音楽へと広げることができるのかと毎回驚かされる。
FINKの話である。
オーケストラをはじめ、様々な音楽と融合したと思えば、2017年に入り「Fink Sunday Night Blues Club V」でブルースへと昇華し、そして嬉しくも今年2作目となる今作をリリースし、これまでとはまた違う表情を覗かせる。
(FINK/Resurgam)
ラテン語で「再起」を意味する「Resurgam」と冠したこのアルバムは、聴く人の内側へ内側へ、と語り掛ける音楽だ。
時間に追われ、周りに流され、協調と惰性と妥協の中で生きる自分に、忘れ掛けた本当の自分の存在に気づかされる。
そして、寒さで身がジンジンと痺れるように、もしくはズキズキと疼く傷のように、そこにあるはずの「何か」についても思い起こさせる。時に鈍い痛みを伴いながら。
(「Not Everything Was Better In The Past」)
それは古き良き思い出かもしれないし、あるいは高揚感や喪失感、または挫折と言った過去に残してきたシコリのようなものかもしれない。
そんな傷を癒すように、許すように、FINKの声が心の内側から共鳴し、じんわりと静かに広がる。ウィスキーが胃に落ち、身体にほのかな温かみを与え、そして次第に全身へと染み渡っていくように。
(聴く人の内面にそっと語り掛ける)
FINKの声に耳を傾け、見えてくる情景はなんだろう。そして、聴き終えて目を開けた時、見えてくる情景はなんだろう。
ほのかに宿る暖かさや優しさを日々の雑踏に踏み消されぬよう、そっと抱いて今日も眠る。
TAGS: Fink | 2017年10月15日