Bolero(ボレロ)で靴をつくる(4)再仮縫い編
現在オーダー中のBolero(ボレロ)のビスポークシューズですが、8カ月ぶりにアトリエにお邪魔をして、2度目の仮縫いに臨みました。
関東に住んでいますとなかなか訪問する機会に恵まれませんが、一生に一度あるかないかのこの経験は少しでも長く味わいたいので、待つのも一切苦にはなりません。そうこう言っている間に早1年2カ月が経過していますが。
仮縫い靴といってもそれはもう靴そのもの。しかしこれが実際の靴になるわけではなく、最後は解体されて細部まで計測された後、別の革で作り変えられるのだから本当に贅沢でもあり、勿体無くもあり。
前回とどれほど変わっているだろうか、と期待と不安の中靴に足を入れると、モノが本来あるべきところに正しく収まるように、靴が足をぴったりと包み込み、得も言われぬ高揚感が込み上げてきて感動を覚えました。
前回の改善点を踏まえた修正箇所を渡邊さんからご説明いただきましたが、ヒールカップや土踏まず、そして小指側の側面など、前回気になった部分は大幅に改善されています。
自分だけのビスポーク靴であることを前回よりずっと強く感じ、感慨に浸っていると、「気になるところはないですか」と尋ねる渡邊さん。自分にはもう十分なフィッティングで非の打ち所がない靴のように感じますが・・・。
もうこれ以上注文を付けたらおこがましいというか、「面倒くさい客」のようで気が引けましたが、渡邊さんから細かく質問してくれるので、感覚を伝えると、触診しながら「もう少しこうした方がイイですね」と、更にどんどん深掘りしてくれました。
靴と自分に対し真摯に向き合ってくれて、心配し過ぎではないかと思うほど細部に至るまで確認してくれる渡邊さん。不安要素を順番に潰し、自分の曖昧な返答や些細な気付きも全て拾ってくれて、仮縫い靴はみるみるうちに修正点のマークだらけに。
これは素人の自分にとっては本当に有難かったですし、「これ以上の履き心地を追求できるなんて、なんて贅沢なのだろう」と思わずにはいられませんでした。
2度目の仮縫いなので修正はほとんど入らないと思ったのに、気付けば1度目の仮縫い以上に細かくマークが入って驚きましたが、一段落すると更に今度はいよいよ靴を解体してのフィッティングが始まりました。
渡邊さんが余りにも手際が良いものだから、「あぁ!もったいない!」と声を上げる間もなくあっという間にバラされていく仮縫い靴。切っては履いて触診し、時折「ああそうか」などと呟きながら、更にバラして最適解を求めていく渡邊さん。
依頼主以上にストイックに、少しでも気になる部分を改善していく姿勢。それは作る靴へのプライドと責任、そして限りない靴への探究心を感じ、何事にも全力で向き合う職人の気質と姿勢に尊敬の念を抱かずにはいられませんでした。
そんな作品の制作過程に、依頼主としてではありますが、一旦に関われたことができていることは自分にとっては本当に幸せなことで、満ち足りた時間を過ごすことができました。
最後まで渡邊さんを悩ませた左右の足の違い(特に左足)も、1時間以上に渡り確認していただく中で、立った時の内側への足の倒れ具合や再度の指の当たり具合などを重点的に細かくチェックされ、最後に改めて足型を取って再仮縫いは全て終了しました。
今後は、いよいよ本番となる靴の制作が始まります。完成まではあと半年くらいとのこと。いよいよゴールも見えてきました。この仮縫いを通じ、不安要素は全て払拭され、今や大きく膨らみ続ける期待しかありません。
一方で、バラバラになった仮縫い靴は靴になることなく、完成後は処分されるそう。そう思うとなんだか無性に愛おしく、また寂しさを感じずにはいられず、夢中でシャッターを切りました。
君のおかげできっと素晴らしい靴が出来上がるはず。今まで本当にありがとう。