【映画】ラストレター

音楽・カルチャー

いよいよ上映が開始された岩井俊二監督の「ラストレター」。 岩井俊二監督の映画ファンということもあり、 封切直後、早速観に行ってきました。

ちなみに原作の小説を読んだ際の感想も過去にまとめていますので、興味がありましたら併せてお読みください(どちらもネタバレは含まれておりませんので、ご安心ください)。

読んだらアウトプットしなければと思いながら、書評を書くのは思いの外難しい。ただ、このまま書けずにいるとブログの更新自体に支障が出る、かと言ってネタバレになってもいけない。何だか漠然とした内容で、書評などと言うとそれこそおこがましい内容ですが、小説を読んで自分が感じたままに書き留めたいと思います。これは君の死から始める物語だ。君が本当に愛していただろう、そしてきっと君を愛していただろう、そんな君の愛すべき人々の、ひと夏の物語でもある。そして、同じそのひと夏の、僕自身の物語でもある。天国に旅立っ...

裕里(松たか子)の姉の未咲が、亡くなった。裕里は葬儀の場で、未咲の面影を残す娘の鮎美(広瀬すず)から、未咲宛ての同窓会の案内と、未咲が鮎美に残した手紙の存在を告げられる。未咲の死を知らせるために行った同窓会で、学校のヒロインだった姉と勘違いされてしまう裕里。そしてその場で、初恋の相手・鏡史郎(福山雅治)と再会することに。

勘違いから始まった、裕里と鏡史郎の不思議な文通。裕里は、未咲のふりをして、手紙を書き続ける。その内のひとつの手紙が鮎美に届いてしまったことで、鮎美は鏡史郎(回想・神木隆之介)と未咲(回想・広瀬すず)、そして裕里(回想・森七菜)の学生時代の淡い初恋の思い出を辿りだす。

ひょんなことから彼らを繋いだ手紙は、未咲の死の真相、そして過去と現在、心に蓋をしてきたそれぞれの初恋の想いを、時を超えて動かしていく―――

映画「ラストレター」公式サイトより

「ラストレター」に関しては、楽しみにしていた反面、多少の不安もありました。今も傑作と思って止まない、独創的な世界観に満ちた小説「リップヴァンウィンクルの花嫁」と比べ、小説「ラストレター」は大衆寄りでやや説明臭く、まどろっこしさもあったから。

ただ、鏡史郎、裕里、鮎美と章で一人称が変わる点や、このストーリーの複雑さから、文字だけで表現するのには背景描写も文章過多になってしまうこと、また、映像化を前提に書き下ろされた点も踏まえ、「『ラストレター』は小説よりも映像向きであり、映画に期待したい」などと偉そうに書きましたが、まさに期待通りの作品でした。

乙坂鏡史郎の届くことのない手紙の買い出しで始まる小説に対し、映画では裕里と鮎美を中心に展開していく構成に大きく変更されており、美しい映像と巧みな演出に序盤から引き込まれ、心配が杞憂であったことを実感しました。

それにしても透明感のある無垢な美しさよ。まるでガラス細工のような、簡単に壊れてしまいそうなもろさと背中合わせの曇りの無い輝き。岩井映画の常に根底にある魅力はやはり顕在で、その映像美に魅せられました。

岩井監督の、美しさと対極の残酷さが混在する、どこか毒っ気のある作品からは今回一線を置き、「Love Letter」など初期の作品に原点回帰したような「ラストレター」はどこか懐かしく、また新鮮で。

この手のストーリーはもっとドラマチックかつ切なく書く人もいますから、純愛映画というジャンルで括ってしまうと物足りなさを感じる人がいるかもしれません。

それでも美咲の「遺書」に託した心境に思いを馳せることで、切ない余韻を残すと共に、心がじんわりと温まる大変良い映画でした。

エンドロールが流れ、たった今物語が終わったばかりなのに、また小説を読み返したくなりました。小説と映画をもっと比べてみたいと思ったのも1つの理由ですが、じんわりとしたこの温かな余韻にもう少しだけ浸っていたくて。

年始に文庫化された岩井監督の「番犬は庭を守る」(文春文庫)を読み終えたら、改めて読み返そうと思っています。

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