革靴をめぐる冒険【第2話】Bolero Bespoke Shoe & Bootmaker編

Sewnを後にし、次に向かったのはBolero(ボレロ)渡邊さんのアトリエ。昨年完成したビスポークシューズの里帰りが1つ目の目的、そしてもう1つの目的は次の靴の相談です。渡邊さんが優しい笑顔で出迎えてくれました。

1号となったロングバンプ・プレーントゥシューズは、仮縫いを2回も行ったおかげか、1足目にも関わらず申し分のない完成度。既成靴では決して体験することのできないビスポークの醍醐味を実感でき、履くたびに嬉しくなります。

Bolero(ボレロ)で靴をつくる(5)完成編【完結】
2018年2月28日、あの日初めてBolero(ボレロ)のアトリエにお邪魔をしてから2度目の冬を迎えた12月某日。全てのきっかけをくれたオボイストさんの手によって完成した靴がとうとう私の手元に届けられました。東京で開催されたオフ会にオボイストさんも参加することになり、厚かましくも無理を言ってデリバリーをお願いしたところ、快く引き受けてくださいました。郵送でも良かったのですが、開封する瞬間をオボイストさんにも見届けて欲しくて。(納期の短縮にも協力していただいたり、本当に感謝です!)上蓋を開けると渡邉さんの奥...

そんな靴ですから容易に改善点も見つからないのですが、2足目を検討するに当たり1,2カ月前から粗探しをするように、毎回フィッティングを確認しながら履いていました。

何とか捻り出した改善点?を敢えて言うなら、日によって右足の薬指の付け根付近が歩行時の屈曲により噛まれ、まれに痛みを感じることがあること。それと左右で比較すると右の方が少しヒールのフィット感が若干甘いことでしょうか。

どちらも、しつこく聞かれれば「そう言われれば・・・。」というレベルのごくわずかな違和感です。

あくまで素人感覚ですので、職人の目から更なる改善点が見つかるかもしれませんし、あまり「完璧です」と言うのも良くないな、と思い、その2点だけを伝え、あとは渡邊さんの触診と再度足型を取ってもらい確認をお任せしました。

もしかしたら違和感の原因は、自分の足が変化したのかもしれません。齢と共に土踏まずが段々と潰れて広がり、足のサイズが大きくなると聞いたことがありますから。

もしくは、最近は一段とランニングに熱を入れているので、そのせいかもしれません。自分の中で色々と憶測が飛び交いますが、どちらも所詮は憶測にすぎず、再度実測してもらえばわかることなので、黙って見守っていました。

さて、今回は、次男が産まれた記念に2足目を作ることにしました。2人目が産まれ、いよいよ自分の趣味にお金をかけることはできなくなりますので、正直これが「最後のビスポークシューズ」くらいの気持ちで。

前回製作したロングバンプ・プレーントゥシューズ(1号)は、無駄な装飾を排したストイックな1足で、ボレロの美しいフォルムが浮き立つ、飽きの来ないデザインでしたが、今回は未練を残さぬよう、自分のやりたかったことを詰め込みました。

まず、素材はスムースレザーではなくグレインレザー。これは年初に掲げた「欲しい物リスト」の筆頭に挙げていました。グレインレザーへの憧れはこれまでずっとありましたが、ただどうしても自分が履いている姿と結びつかなくて。

今まで見てきたグレインレザーの靴は堅牢でカントリー色が強いイメージが先立ち、自分には似合わないのではないか、という懸念が喉につかえた小骨のように引っ掛かっていました。

グレインレザーの靴が欲しいという欲求と、実際に履いた時に感じるであろう違和感、この相反するジレンマを既成靴では払拭できないと感じ、今回オーダーでその両者の間の隔たりを何とか解消したいと考えました。

まず革は、斑が小さく整然としたモノを、と相談し提案いただいたのはフランス・Annonay(アノネイ社)のピングレインレザー。いわゆる型押しです。これ、オボイストさんがレイジーマンで使った素材でしたので、自分の構想にもありました。

生真面目なボレロのレイジーマン
待ちに待った三足目のボレロ、レイジーマンが出来上がりました。渡邊さんから連絡をもらって、早速アトリエへ。ちょうど先週までにひとつ大きな仕事を片付けたところでしたので、清々しい気持ちで。こちらです。Bolero Lazy Man by Ann

フレンチグレインやハッチグレイン、一応スムースレザーなども拝見して、やはり全体的な構想に最もマッチしたピングレインレザーを選択。

ちなみに一応もっと明るいカラーも選択できるか当たってもらいましたが、入手できるのはダークブラウン1色のみ。

次にデザインです。今回はシーンを問わずにどこでも履いていける靴を、ということでジーンズからジャケパンまで合う靴を考え、Uチップを計画していました。実はUチップも過去に所有したことがなく初体験。

ただ、Edward Green(エドワードグリーン)のDoverのような5アイレットの靴ではグレインレザーと相俟ってやはりカントリー色が強くなってしまうので、2アイレットにしたいと考えていました。

持参したノートのスケッチを見てもらいながら渡邊さんと相談して、最終的に全体のバランスを考えて3アイレットにすることに。

ライトアングルステッチへとつながる羽根部分は、直線的ではなくやや曲線を描いてカジュアル感を出してもらうようお願いをし、トゥの先端にあるステッチはピースの関係でシームレスに。

次にスクエアだったトゥシェイプはやや丸みを持たせ、チゼル気味だったサイドの角も丸く削り、上から見ると大好きなエッグトゥに近いラウンド、しかしサイドから見るとほんのりとチゼル感が残るよう調整してもらうことにしました。

更に、やや内振りだった先端のポイントも、幾分中心に寄せてもらうことに。

その他、シューレースにはタッセルを、アイレットの脇には子どもたちのイニシャル(ハルの「H」とアチャの「A」)を左右に1文字ずつ入れてもらうなど、やりたいことを詰め込みました。

グレインレザーですからイニシャルを入れても目立ち過ぎることはないと思いますが、やり過ぎ感がでないよう、その辺のさじ加減は渡邊さん頼りで。

これで2足目のオーダーは完了。今回フィッティングの面での調整はさほどではないそうで、仮縫いは恐らく不要だろうとのこと。早ければ半年余りで出来上がるとのでした。

オボイストモデルが10月に完成しますが、もしかするとボレロの2号も年内には完成してしまうかもしれません!

そんなわけであっという間の「革靴をめぐる冒険」。無事に種蒔きを完了し、オーダーする楽しみから今度は完成を待つ楽しみに変わりました。納品されるまでの間、毎日をポジティブな気持ちで過ごせそうです。

さて、この冒険もここで一旦終了・・・、と言いたいところですが、実はもう少し続きがあります。そのことについてはまたいずれかの機会に。それでは!

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